危険な刺客ムタ登場
政と信が小屋の中で眠っているなか、
貂は外で木に実る果物らしきものを
もぎながら一人でたそがれていた。
すると突然、貂の後ろに
あの危険なムタが現れた。
でっぷりと太った身体に藁のような服、
その服に蛇のような細長いものが
6本ほどくっついている。
吹き矢をまるでキセルのように右手で持ち、
口に近づけている。
猛獣が乗り移ったかのような不気味な男だ。
貂は全く気づいていない。
しかし、寝ていた信は、
ムタのすさまじい殺気に反応したのか、
カッと目を開き飛び起きた。
ムタが貂の後ろから吹き矢で狙う!
ムタが貂の後ろから、吹き矢で狙って、
まさに吹き矢を射とうとした瞬間、
木製の細長いががっしりした物が
勢いよくムタめがけて飛んできた。
ムタは後ろに飛んで避けた。
貂は両手を上げて驚いた。
信がムタを止めるために投げたのだ。
信がムタを凄まじい形相で睨みつけた。
王弟派の軍の追跡部隊は
一方、王弟派の軍の追跡部隊は
三人の後を追うムタを追跡するのに
苦労していた。
ムタがとんでもない急斜面を
驚くべき速さで進むので、
それに追いつけないでいたからだ。
軍の追跡部隊でも
ムタの強さは人間離れしていると
いう話しで盛り上がっていた。
それだけムタは恐ろしい男なのであろう。
信とムタの激闘
ムタと信が対峙する。
しかし信は若干拍子抜けしている。
ムタが弱そうに思えたからだ。
身体が小さいし、全く威圧感がない。
しかし、ムタが吹き矢を口に加えて構えた瞬間、
信の身体がゾワッと反応した。
信の本能がムタの吹き矢の恐ろしさを
無意識に感じ取ったのであろう。
信は慌てて貂を、小屋に入っていろ!
と避難させようとした。
貂を巻き込まないように
配慮したのであろう。
しかしムタはいろいろ考えて、
信には吹き矢は使わないことを決めた。
手に持つまさかりで信を倒して、
自分の強さを証明しようとしたのだ。
ムタが信に挑みかかった。
信はムタのスピードに一瞬仰天したが、
速さなら負けないと思い反撃した。
しかし反撃したつもりが目の前に
ムタの姿がない。
いつの間にか後ろに
回られていたのだ。
信はまさか!と表情を変えた。
信は後ろからのムタの攻撃を
なんとか防ぎつつ、
苦し紛れながらも剣で反撃した。
その様子を、小屋から出てきた政が
見ていた。