漂らしき男の正体
信が、漂らしき男を漂と呼ぶと、
その男は、違う、政だ!と答えた。
信は、その男が漂とは別人であることに驚いた。
しかも、政が信の名前を呼んだのでなお驚いた。
信は、政がなぜ自分の名前を知っているのか?
何故漂と同じ顔をしているのか?を尋ねた。
ほったて小屋に近づく者
一方、ほったて小屋の外では、
漂の追手の大男が近づいていた。
その大男は、
ほったて小屋の壁の役割をしていた
カーテン状の布を、剣で横方向に切り裂いた。
ほったて小屋が倒れる寸前、
信と政は外へ逃れた。
その追手の大男は、政に向かって言った。
命をもらうぞ、秦王 政と。
信は、政が秦王であることを知って仰天した。
そして、漂は秦王の替え玉にされて結果として
殺されたということに気づいて、切れた。
刺客の大男と信の戦い
信は、漂を身代わりとした秦王政も許せないが、
それ以上に漂を実際殺した刺客の大男が許せない。
信は背に背負った剣を抜いて刺客の大男に挑みかかった。
刺客の大男は信の剣の腕に驚いた。
しかしそこは漂を倒した男だ。
漂と同じ力量の信が敵うはずがない。
信は大男の蹴りを顔に受けて倒されてしまう。
しかし、信はヘロヘロながらも立ち上がった。
もう立ち上がれないだろうと
確信していた刺客の大男は驚いた。
いや、少しビビッてさえいたかもしれない。
信は改めて大男に挑みかかった。
大男は信の剣が速く、重くなっているのにビビった。
信の剣がさらに速くなり、
大男の体を切りきざみ始めた。
大男は信に切られていることを自覚して動揺した。
動揺したことで、一瞬信の姿を見失った。
信は大男が動揺した瞬間を見逃さなかった。
信はその一瞬の隙をついて大きくジャンプした。
そして大男の頭の上から剣を振り下ろした。
信の剣は、大男が防御する剣を砕いて
大男を切り裂いた。
つまり、信は見事に漂の仇を討ったのだ。
信が、大男にとどめを刺そうとしたその時、
大男は信に命乞いをした。
自分が死んだら子らが孤児になるというのだ。
信は孤児という言葉に反応した。
自らの辛い経験と重なったのであろう。
信は、大男にとどめを刺すのを
思い止まった。
大男はほっとしたが、
次の瞬間、秦王政が
大男の首を切り落としてしまった。
信はそれには唖然とするが、
政に次はどうすると問われて戸惑う。
すぐには言葉が出ないようだ。