秦の王都咸陽では
秦の王都咸陽では、王の弟が、兄の、
つまり秦王政の首を待っていた。
王弟とは険しい目つきをした
いかにも狡猾そうな男だ。
その王弟が丞相に問い糾した。
何か手を打っているのだろうな!と
丞相は即座にもちろんですと答えた。
王弟派が王座を奪うために打った手とは
丞相によると、本来王の命令であることを
示す印のある命令書でなければ動員できない
正規軍を勝手に動員したらしい。
王の弟とはいえ、王ではない。
従って、正規軍は動かせないはずだ。
それを動かすことができたということは、
既に軍は王弟派によって掌握されてしまった
ということを意味するのだ。
黒卑村を襲う正規軍
黒卑村に秦の正規軍が到着した。
そして黒卑村の人々を襲った。
動くものすべてを的にするらしい。
黒卑村の人達は突然現れた軍勢に驚いた。
まさかその軍勢に攻撃されるとは
思わなかっただろう。
包囲される秦王政と信
ほったて小屋の側で信と話しをしていた政は、
異変を察知して、軍が動員されたことを悟った。
それも、相当な数が動員されたらしいと悟ったのだ。
もちろん政は、軍の強大な力を熟知している。
つまり、軍相手には到底太刀打ちできないのを
知っているのだ。
政は、軍が動員されたことを知った時点で
ある程度覚悟らしきものをした感じすらある。
それほど軍というものは強力なのだろう。
気づけば、政と信は軍の大軍に包囲されていた。
半分あきらめかけている政とは反対に、
信は戦う気満々だ。
何とかして軍の包囲を突破する道を必死で探した。
政は、信が軍と戦うつもりなのを知って驚いた。
信が、包囲を突破しようとする考えを述べるたびに
政はダメ出しをした。
信は、川沿いを切り抜ければ突破できる
かもしれないと考えた。
そして、政に一緒について来るように
要求した。
政は軍の包囲を突破することは無理と知りつつ、
仕方ないので付き合うことに決めたらしい。