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再び抜け道で
抜け道で、また貂が政に疑問を感じたことを
質問した。
王弟派だらけの王宮から、
王が一人で逃げられたことが
信じられなかったからだ。
政はそのいきさつを静かに説明した。
信は政の説明を静かに聞いていたが、
政の言ったある言葉に反応した。
信は、政の言葉から、漂の命を
使い捨てにしたように感じたからだ。
信はかっとなって政を殴った。
これでもかというくらい殴った。
それを見て、貂は政が死んでしまうと
思ったほどだ。
信が、一層力を込めて殴ろうとした時、
政は信の首を左手で押さえつけて信を持ち上げた。
そして、政は信に話した。
時は遡って漂と晶文君が王宮で
王宮の王に謁見する部屋らしき場所で
晶文君が漂に身代わりの件について説明している。
晶文君があいまいな言葉を発した時、
秦王政が言葉をさし挟んだ。
漂は王が突然話したので驚いて平伏した。
政は、漂に、政と間違われて殺される
可能性もあることをはっきり話した。
無言の漂に、政は恐怖で声も出ないものと
思ったらしい。
しかし、そうではなかった。
漂は、晶文君に恐る恐る尋ねた。
しゃべっても良いのかどうかと。
王から許可を得たので、
漂は立ち上がって堂々と答えた。
これほどの大任をお受けできるとは
夢にも思わなかったと笑顔で話したのだ。
その態度は誇らしげな風でもあった。
晶文君はその言葉を聞いて驚いた。
同時に喜びもしたであろう。
漂は政に死ぬかもしれないのだぞ
と念を押されて聞かれたが、
漂は即座に誇らしげに答えた。
つまり、漂は危険を承知で引き受けたのだ。
信の選択
政は、信に漂が危険を承知で
引き受けたことを話した後、
信にどちらの道を進むかを選ばせた。
つまり里に戻って下僕を続けるか、
それとも王をたすけて
凶刃の野を行くのかを。
信は考えるまでもなく、
王と共に行く方を選んだ。