抜け道から出た三人
政と信と貂は、抜け道から出て歩いている。
軍の包囲から脱したとはいえ、
軍がいなくなったわけではない。
三人には、それぞれ課題がある。
金目当ての貂は、とにかく秦王政
から金をもらうこと。
信と政は軍の追跡から逃れて王宮に戻ること。
しかし、その王宮に戻ることが非常に難しい。
軍の追手をかわして
いかなければならないからだ。
政によれば、晶文君と合流するのが唯一の道のようだ。
森の先に最後の合流地があるらしいので、
まず三人でそこを目指すことにした。
秦王政を探す軍
一方、軍は秦王政の行方を捜索していた。
抜け穴にも気づいたようで、
全軍を投入してでも捜索するようだ。
軍の指揮官は、部下に
南越から連れて来た
ムタという刺客を呼ぶよう命じた。
このムタが実は恐ろしい。
鼻は利くし、足も速い。
なんといっても毒矢の達人だ。
それは、一吹きで猛獣をも
倒してしまうほどだ。
こんな刺客に狙われたら
まず助からないだろう。
必死に合流地を目指す三人
恐ろしい追手が加わったことなど知らず、
必死に合流地を目指して走る三人。
貂は課題が異なるはずなのに
何故か一緒に走っている。
実は、金目当ての貂は、
あてがはずれたのだ。
秦王政は金持ちに違いない
という先入観から、政が逃げるのを
手助けした。
しかし、兵に追われている政が
金を持っているわけがない。
結局、王宮に戻らないと
金は受け取れないと
分かったからだ。
それで仕方なく一緒に
合流地目指して走っているのだ。
一縷の望みを託してということだろう。
しかし信は、走っている途中、疲労のあまり
倒れて動けなくなってしまった。
しかし、政は信と一緒に休んでいる時間はないと
判断し、政は信を背負って走り始めた。
咸陽宮では
一方。王都の咸陽宮では、
大臣の竭丞相が慌てていた。
王の死体が見つからないからだ。
万が一王に逃げられでもしたら、
反乱の罪で大罪人になってしまう
可能性もゼロではないからだ。
竭丞相は、替え玉まで準備して王を
逃した晶文君の用意周到さに
下級大臣として甘く見ていたことを反省した。
竭丞相は、王と晶文君を絶対合流させるな!と
配下の者に命じた。
そして、晶文君の行方を探し、
首を獲ってこいと命じた。
その時…
王騎将軍現る
竭丞相が晶文君の首を獲ってこい
と配下に命じた時、
突然王騎将軍が現れた。
そして、その必要はありません!
と言った。
つまり、既に王騎将軍が
晶文君を討ち獲っていたのだ。