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合流地点の建物の中で
政と信と貂の三人は、合流地点の建物の中に入った。
建物の中は、きれいに整理されていて、
掃除も行き届いているようだ。
しかし、誰もいない!
それでも政は、非常に落ち着いている。
自分達が早く着いただけだと
思っているからだ。
信は、政が落ち着いているのが
気に障るらしい。
晶文君が生き残っているか
どうかが気になるのであろう。
政は、信と貂に
適当な部屋で休んで待て
と命じた。
信が藁の上で横たわって眠っていると、
貂にメシだぞ!と起こされた。
テーブル一面に準備された料理を見て、
信は声を上げて驚いた。
疲れた身体を回復させる
必要もあるからだろう、
信はむさぼるように料理を食べた。
政と貂はそれを見て呆れるくらいの勢いだ。
400年前の秦の名君と山の民
三人で食事をしている時、
貂が政に素朴な質問をした。
400年前の屋敷にしては
きれい過ぎると疑問に思ったからだ。
それに対して政は、400年前の秦の王穆公
について貂に丁寧に説明した。
つまり、穆公はまれに見る名君だったのだ。
徳が高く、その穆公に山の民が心服して
いたのだ。
その結果、秦王の穆公と山の民の王が
盟を結んだ。
それを聞いて貂が反論した。
今は、秦人と山民族が交流している
などということを聞いたことがないからだ。
それに対して政は、
穆公はまれに見る名君で、
穆公の死後は盟は秦側から失われ、
山の民との交流は途絶えてしまった
ということを説明した。
そしてこの小屋は穆公が山の民と
交流するために作った小屋だが、
穆公の死後は忘れさられてしまった
ことも説明した。
しかし山の民は400年たった今も
穆公のことを忘れていない。
穆公との思い出の場所を神聖な地として
崇め、時々山から降りてきてこの小屋を
守っているということを説明した。
それも400年間ずっと。
それを聞いて、貂は感動して泣き出した。
仲間のことを思い出して
感傷的になったのだろう。
貂が一人で感傷にふけっているなか、
信は必死に剣の練習に励んだ。